今年メジャーデビュー15周年を迎えたバンドSPYAIRのギタリストであり、メインコンポーザーでもあるUZがソロアルバムを発表した。3年にも及ぶ制作期間を経て届けられた『STATE OF RHYMES』は、UZの音楽的探求の旅を結実させた全10曲を収録。ここでは前後編の2回に分けて、楽曲へ込めた想いと制作過程について、1曲ずつ本人に解説してもらった。
一緒に声を出せる曲が欲しい、と思ったのが始まり
06. Jazzy 84
■まず、タイトルにある“84”にはどういった意味が込められているんでしょう?
「単純に、俺が1984年生まれだからです(笑)。この曲は自分のスタイルを大声で歌っていることから、このタイトルにしたんですよ」
■トラックは、コードを鳴らしつつリズムを刻むピアノとサックスのループで進みつつ、全体的にスウィンギンですね。
「そうですね。加えて、サビはディストーションギターをガッツリ鳴らしていてロックテイストを感じてもらえると思っていて。全体的にはニュージャックスウィングの跳ねたビート感の上でラップしたかったんです。激しい曲でシャッフルビートはアルバムの中でこの曲だけですね」
■たしかに、心地いいノリとロックの熱を感じます。そして、ボイスサンプルの、ほぼ息のみの声がイントロと1番のサビ終わりに入っていて。この表現も活きていますね。
「そのまんまにはしなかったんですけど、ニュージャックスウィングの独特のニュアンスが出せたかと。そもそも、ライヴに来てくれた人がハンズアップできるような気持ちいいビート感で、一緒に声を出せる曲が欲しい、と思ったのが始まりでした。アルバムの後半戦一発目に、そういう体を揺らし、手を上げて楽しんでいきましょう、みたいな楽曲を持ってきたかったんですよね。だから、リリックのメッセージを受けとってほしいというより雰囲気を感じてもらえたら嬉しいです」
ギタリストの自分も大切にしたいと思うようになった
07. Blue Map
■「Blue Map」はUZさんがどういう音楽畑で育ってきたかを強く感じられる楽曲かな、と。アルバムで一番テンポが速い曲でもありますね。
「疾走感のあるビートの曲って自分のルーツにあるし、好きなんです。それとアルバムに流れる空気感をかけ合わせた曲をイメージしながら制作しました」
■バンドでのアレンジとの違いはサックスの音色が大きいですね。
「そうですね。それがないとロックに寄り過ぎてしまうし、アルバムの空気を持ってくるといった意味でもサックスを入れることで違う表情を見せたかったんです」
■リリックからは、子供の頃のメンタルのまま、興奮と刺激を求めて動けといったメッセージが届きました。
「挑戦だったり、新しいことをやってみたり、一歩踏み出してこの星で遊んでいこうぜ!という想いが軸にあって。それを子供の頃や、ライヴのステージへの向き合い方をエッセンスに入れて表現しています」
■その中で、Dメロの〈The first guitar I got here〉から始まる英詞の内容がよくって。興味が惹かれた方は訳してほしいと思いました。
「このDメロは自分でも気に入っています! 自分の中に音楽の原風景としてあるもので、そういうのってこのアルバムを見渡した時に、“Take My Wish”でしか描いてなかったから、入れておきたいと思って。曲作りの最終段階でつけ加えました。実際、書いてみるとこういうメロディも言葉を乗せるのも得意だな、と。積み重ねてきたものがしっかりこの短いDメロに乗せられました」
■そのDメロ前でギターソロが入ります。「Jazzy 84」のアウトロにも心に残るギターソロを弾いておられて。少し前までロックシーン全体的にギターソロが減っていましたが。最近、UZさんはソロを弾きたいモードに入ったとおっしゃっていましたね。
「そのモードがアルバムを通して出ていますよね。しかも、SPYAIRではペンタトニックスケールやメジャースケールを中心にギターソロを構築することが多いんですけど、もっと突っ込みたくて。クロマチックスケールを多用したり、今まで使ってこなかったスケールに挑戦しているんです。結果、全体的に少し怪しい空気感が出せました。こういうのをひとつのスタイルにしたかったんです。自分がソロ活動をやる上で、特に1stアルバムの曲たちは一生掲げていくものだから。先のライヴまで見据えてギターソロを結構入れています。やっぱり、ゴリゴリのラップアルバムを作りながらも、根っこはギタリストで。始めた頃こそ自分のソロ活動の時はギターを持たない、くらいに思っていたんですが、この数年でギタリストの自分も大切にしたいと思うようになったんです。その気持ちの変化が作品に反映できました。それが自分にしかできない音楽に繋がりましたね」
閃きが降ってきた瞬間、“キタっ! 俺やべぇな!!”と
08. Urban Cruise
■「Urban Cruise」はパッと聴いて新しさを感じました。洗練されたピアノのコードのループと太くうねるベースだったりに、ジャズやソウルのフレーバーを強く感じたというか。
「ジャズをテーマにした大好きな映画からインスピレーションを受けたんです。それもあり、ジャズのコード進行を使っていて。自分としては都会的な雰囲気を感じたので、そのイメージに沿って曲を仕上げました」
■グルーヴィな曲でもありますよね。
「そうなんです。あるガールズグループのライヴを観に行く機会があって。このくらいのテンポ感の4つ打ちの曲で、めちゃくちゃ盛り上がっていて、最強だな、と。そこでわかり易い4つ打ちのループをソロでもやりたくなったんです。あと、Dメロで転調しているんですけど、この閃きが降ってきた瞬間、“キタっ! 俺やべぇな!!”と思えました(笑)。すっと自然にいってるようでなかなかエグいことができているんです」
■〈Still we dance 揺れるギターとシルバーチェーン〉から始まるブロックですね、めちゃくちゃ気持ちいいです。リリックにはリスペクトするアーティストさんの名前が出てきます。
「ラップだからこその手法ですよね。リリックの中に〈New York〉と入れていることもあって、ニューヨークを拠点にする好きなラッパーを入れていてます。曲の舞台は東京なんですが、〈向かおうかNew York〉とあるように、首都高速で車を走らせてそう思っているイメージです。2番は東京の街を歩いていて、クラブに行こうかな、っていう」
■サウンドも言葉も洗練されている中に、〈千鳥足〉とあって。この余裕感がいいです!
「昔の自分なら入れない言葉ですね。でも、この曲を書いている時期には、自分のラップ論が確立していたから。〈千鳥足〉って歌詞に入れるの変かな?といった躊躇すらなかったです(笑)」
■〈ThinkよりMove〉というアルバムに繋がるフレーズも出てきます。あと、〈余裕がないからこそダンスタイム 追われる時間にも無駄なスパイス〉は韻の響きも意味的にも好きでした。
「ラップをやるようになって普段から、いいなとか、この言葉をラップにしたいな、と思ったワードを書き溜めているんです。それをアルバムに散りばめていて。〈ThinkよりMove〉はそのうちのひとつです。〈余裕がないからこそダンスタイム〜〉は書いている時、実際に時間に追われていたんでしょうね(笑)。制作に向かわなければいけない時期でもレコード聴く時間とか、たまに遊びに行く時間を持つことで効率がいいこともありますよね!」
もっと進ませてくれよ、前へ行かせてくれよ、って
09. Take My Wish
■2023年に制作していたソロ曲を一度リセットして、今回のアルバムは2025年に新たに構築し直されたもので。だから2023年発表のソロデビュー曲“Take My Wish”が『STATE OF RHYMES』に収録されるとは想像してなかったです。ただ、2017年に作り始めて、ソロ活動を本格化させてから最初にフルサイズを仕上げた曲であり、“Take My Wish”でソロの方向性が見えたとおっしゃっていましたから。この曲が入ったことで1stアルバムを制作する旅をリアルに感じられました。スタート時点の記録としてもいいな、って。
「実はここに入れる別の曲を作っていたんです。それはアルバムラストの“Photographs”に繋がっていくような、激し目でエモいポジションというか。涙が出るようなロックテイストの曲で。ただ、制作を進めながらずっとなんとなく違和感があったんですよ。まるで “Take My Wish”をなぞっている感覚になってきて。だったら“Take My Wish”を入れよう、と考え直したんです。結果、アルバムを通して聴いた時に収録してよかったと思えたし、想い入れの強い曲ですからね。今の自分からすると、歌詞が抽象的だったりするけど、ミクスチャー感のあるよくできた曲だと思えています」
■改めて曲に触れると、リズムトラックのループとミクスチャーロックのコード感があって、短いサビも特徴ですね。
「ワンビートの美学というか。ヒップホップ的なビートを作ってリズムチェンジせずに鳴らしつつ、Bメロでリズムを抜いて変化を感じてもらえるようにしたんですね。そういうループミュージックやヒップホップへの憧れと最新のU.S.ミュージック、ジャズ。あと、Hi-STANDARDとかリンキン・パークで育ってきたルーツが俺にはあるわけだから、自分にしかできないミクスチャーにしていこうと、当時考えていました」
■シングルでリリースした時期は、SPYAIRがヴォーカルのオーディションの真っ只中で。今、歌詞に触れると、ほんのりとした孤独感と諦めるには早過ぎるといった想いを感じます。
「孤独感は感じていたのかな……前を見ていいのかいけないのか、みたいな気持ちと、でもソロを始めるんだ、と一歩踏み出す気持ちの葛藤があったから。それは単語一つひとつに出ているのかもしれないです」
■Dメロに〈The voice inside me Let me start〉とあって。曲を作ること自体が自身の内面と向き合っていくことだと思いますが、言葉で綴るのはまた違う対峙があるのかな、と。より具体性を帯びていくというか。そのスタートでもあったのかな、と感じました。
「歌詞のテーマは自身への手紙なんです。自分が歩んできて、いろんな経験をして。30代前半くらいの頃に人生で諦める部分、これやりたかったけどまあいいかな、というものが増えていたんですね。でも、自分のやりたかったこととか夢を優先して生きていこう、これがやりたかったんじゃないの?って。そういう昔の自分との葛藤を描いたし、詞と向き合っていた当時、もっと進ませてくれよ、前へ行かせてくれよ、って想いが強かったから。Dメロは、もう一度行こうぜってことが言葉になっているんです。まさに、始まりの曲ですね」
■そして〈State of rhymes〉と、ソロのテーマと言える言葉が始まりのこのリリックに既に綴られています。
「当時、ソロプロジェクトのことをState of rhymesと呼んでいたりしたんですよ。〈State of rhymes 当て所ない想い唄うStory〉と書いているように、行き場のない気持ちを歌うこと自体のタイトルとしてこの曲に入れました」
誰と一緒に笑っていられるのか、どれだけ今を楽しめるか
10. Photographs
■アルバムの最後を締めるのは、胸の奥から温かいものが込み上げてくるようなミディアム〜ミディアムスローテンポあたりの1曲です。
「アルバムの最後に入れると決めて作った曲で。旅の終わりの温かい気持ち、いい旅だったな、そして次にまた行きたいな、といった想いを曲として表現しました」
■ピアノの美しいコードとリズムトラックがループしていて。鳴っている音数が少ない中で、エモさが漂っていますね。
「ピアノのループと、ここに入れたギターのアルペジオは、2023年にシングルで出した “Let Me Hear”と“Life Stories” の一部分をセルフサンプリングして、組み立てたんですよ。特に、2023年当初の構想では“Life Stories”をアルバムの最後に入れたいと思って作ったから。それもあって当時の想いもこの曲に繋いだんです」
■それって素敵ですね。2番のサビ前のバースではリズムトラックがなくなって。そこでまた想うところがありましたし、Dメロ終わりの〈Life goes on・・・〉でチェロが鳴って、グッときました。
「まず、ビートは90年代のヒップホップ的で。自分で作ったひとつのビートを抜き差ししているんです。そして、弦に関しては、やっぱりいいですよね! あえてこのアルバムでは使わないようにしていたんですが、こういう曲なら、ってことで入れて。もっと盛大に弦のスコアを書くこともできたんだけど、あくまでラップ的なバラードの位置づけだから、チェロだけにしました」
■本当に派手にいかないところが素敵です。リリックは、〈なぁ 聴こえるか? My buddy〉の呼びかけからスタートします。
「自分の半生というか。特に1番では今でも進み続けている理由を振り返りつつ、それでも進むんだ、といった意志を書いていきました」
■〈昨日を重ねた今日が たった一つの“確か”なんだ〉のフレーズも響きましたよ。
「〈たった一つの“確か”なんだ〉は今のことで。過去を振り返ることによって今が強くなる。その今を大切にすることはずっとテーマとしてありますね」
■そして、最後のサビの〈So smile with your friend Smile with your fam〜〉でより温かい気持ちになりました。ヒューマニティを余韻として感じられたというか
。
「旅の中で誰と一緒に笑っていられるのか、どれだけ今を楽しめるか。結局、そこだと思うんです。ソロ作品とは言え、人との繋がりとか一緒に笑えることが人生にとって大切で。それを最後に持ってきたかったんです。改めて、こういう少し泣けるエモさっていいですよね。斜に構えて恥ずかしい、と思われることもあるかもしれないけれど、そういうものをストレートに伝えて泣ける瞬間って俺にはありますし」
■聴いていても泣けますよ、こういう純粋でストレートな言葉って。
「純粋って大切なことで。普段、言葉で言えないからこそ、音楽においては特にね。それを最後に持ってきて、ひとつ旅の終着点にしたかったんです。それが伝わると思いますし。本当に、最後なにを言うかはいろいろ考えたんですけど、このフレーズにしてよかったです」
■伝わる音楽ってUZさんの根底にあるのかなって。SPYAIRでもそうだし、ソロでも強く感じました。
「年齢を重ねていく中でいろんな音楽を聴いて、いろんなものに触れたりして感覚が研ぎ澄まされていくところもあって。それでも自分の核になるのはピュアなものだったりするんですね。ロックバンドが好きで、人によっては青臭く感じるものが好きでいて。そこはどこまでいっても大切にしたいんです」
ひとりでできることはやり切ったから、次のフェイズに進みたい
■前半、後半に分けて収録した全曲を解説していただきましたが、アルバムを完成させたことで、音楽探究の旅はまだ先がありそうですね。
「自分の曲として形にしてこなかった音楽を作れて楽しかったです。同時に、最後にバランスをとっている自分がいて、挑戦と今までの経験値が絶妙なバランスで落とし込めたという意味で、いい1stソロアルバムになりました。あまり門外漢に偏っても、とってつけたものになるし、どこに根を張って生きてきたのか?ってなりますからね」
■“Photographs”に〈Life goes on〉とあるように、人生も音楽家としてもここからまだ続いていきますからね。
「俺、12月13日に41歳になって。まだまだ新しい経験をしているし、音楽を続けていきたいんです! それはソロも。完成させる前は、しばらくSPYAIRの活動以外は少しお休みして、音楽以外のことをやろうかな、と思ってたんです。でも、このインタビューの前半(12月25日アップの
インタビュー参照)に、“マスタリングの帰りに新しい曲を作ってた”って言ったように、やりたいことが出てくるし、曲を作りたい、ってそればっかり考えているんですよ。ただ、次は基本こそひとりでやりつつ、他の人と絡んで。例えばフィーチャリングしたり、ベースを弾いてもらったりして、もっと開いていってもいいかなと今の時点では思っています。今回、マスタリング以外ひとりでやって、1stアルバムとしてはそこがよかったし、同時にひとりでできることはやり切ったから、次のフェイズに進みたいっていう。自分の性格上いつか、全部ひとりでやりてぇ!!みたいに思う時期も訪れるかもですが。とにかく次に向かうためにもまず、この『STATE OF RHYMES』をもっと届けたいです。聴いてもらって、なにかを感じてくれたら嬉しいですね」
■音楽を作る喜びとか、『STATE OF RHYMES』で感じたものがSPYAIRにも返っていきそうですね。
「本当に今、衝動的でフィジカル的な部分でやれているし、SPYAIRも楽しいです!」
UZ
ユージ。'05年に結成されたバンドSPYAIRのギタリスト。これまでSPYAIRの楽曲を100曲以上制作するなどバンドのメインコンポーザーとして活躍中。'23年デジタルシングル「Take My Wish」でソロデビュー。'25年6月「Fly Higher」、8月「Soloist」をリリース。'25年12月に待望のソロデビューアルバム『State Of Rhymes』を発表した。
公式サイト
https://www.spyair.net/uz/