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楠木ともりが語る、初めてラップにチャレンジした「MAYBLUES」

Interview

2024.07.12

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約4年前に発表したデビューEP収録の「ハミダシモノ」がエンディングテーマに起用され、声優としてヒロインのミーシャ・ネクロンを演じるアニメ作品の最新シリーズ『魔王学院の不適合者 II ~史上最強の魔王の始祖、転生して子孫たちの学校へ通う~』第2クール。このエンディングで流れている「シンゲツ」が表題曲となっているシングルが5月8日に届いた。

「シンゲツ」は、楠木ともりさんが幼い頃から敬愛するL'Arc-en-Ciel のTETSUYAさんが作曲&プロデュースを務めている。アップミドルあたりのテンポでありつつ、静けさと美しさ、切なさを内包し、同時に凜とした強さを持った楽曲と、楠木さんが描く繊細な言葉、そして透明感のあるブレッシーな歌が溶け合ったナンバーとなった。月の満ち欠けになぞらえた想いと記憶の在り方、そして〈君の華 咲かすのは 君が知る 記憶の涙(カケラ) 降り積もれ〉というフレーズが聴く者の中で広がっていく。さらに、この新曲に彼女は、「ハミダシモノ」との繋がりをそっと潜ませている……。
Text 大西智之 Photo 後藤倫人(UM) Hair&Make-up 大久保沙菜 Styling 葉月

アナザーカバーストーリーに楠木ともりさんが登場しているAni-PASS Plus #12は、「シンゲツ」についてじっくりと語るロングインタビューと曲の世界を切り取った撮り下ろし写真を掲載。今回、B-PASS onlineでは、最新シングルの2曲目に収録の「MAYBLUES」を紐解くインタビューと、楽曲の歌詞にちなんだKeyword Q&A、初出しのアザーフォトをお届けします。

この1行がすべてくらいの想いでラップのリリックを書きました

■シングル「シンゲツ」の2曲目に収録の「MAYBLUES」の話を聞かせてください。エアリーで、深いディレイをかけた歌が印象的なスローナンバー。サビで倍テンというか、ビートを感じていく曲ですね。詞、曲共に楠木さんが手掛けています。

「打ち込みテイストで、やったことのない楽曲に挑戦しました。タイトルの“MAYBLUES”は“5月病”という意味なんですね。これまでは、漠然とした未来に対する不安とか、大きなところにフォーカスすることが多かったんですが、 “MAYBLUES”は狭い範囲で書いてみたくて。5月病に対する捉え方が軽くなったらいいな、という想いと、この曲を聴くことでなんとなく乗り越えられた、くらいのラフさがほしい、というところで曲、歌詞、アレンジを決めていきました。デモ段階ではメロディだけでなく、コードまで自分でつけています」

■それは大きな試みですね。チャレンジといえば、さらに、ラップセクションが最後に出てきます。

「はい、初めてのラップです。最初は、メロディを楽しんでいただく曲として、部屋でなんとなく流しておくポジションになったらいいなと思っていたんですね。そこから制作に入ってみると、歌詞が難しくて。そもそも5月病を描いていった終着地点はなんだろう?と改めて考えた時に、私は5月病を治すとか、最後に元気になるんじゃなく、やり過ごすところに落ち着きたいな、と。というのも、5月病の時って周りの言葉を聞けないなと思ったんです。“がんばれ!”“やる気出せ!”と言われても、うるさいなぁって撥ねつけてしまいますよね(笑)。だから、5月病にかかった人の気持ちで言葉を紡いでいこうとしたんですが、そうするとオチがなく、ただの暗い曲になってしまうんです。そこで行き着いたのが、負けん気というか、気持ちがダルくてなにもやりたくない、みたいな心境の中で湧いてきた“別に私だってできるし!”といった想いに切り替えよう、と。ただ、そういった言葉を言い表わすにはメロディが足りないし、この平和なメロディラインと合わないと考えている時に、“ラップ入れてみよう!”と思いついたんです。独学で、韻を踏むところからとりあえずやってみよう精神で書き始めたらわりといい感じになりました!」
■ラップセクションの冒頭、〈再生速度0.5倍標語〉からフロウにキレがあります。

「ラップに入ると急に歌詞が強くなりますよね。これはあえてコントラストをつけていて、そこまでのだらっとした空気にラップセクションで少しピリッとさせたかったんです。このラップの中で、一番気に入っているのは〈この時代私がいなきゃ成り立たない〉です。世の中的に“代わりがいる”みたいな雰囲気になってきつつありますよね」

■はい、そう感じます。

「でも、絶対誰しもオンリーワンですし、お前なんかいらないんだぞ、とか言われても“はぁ? そんなことないし!!”みたいな、これくらい強い気持ちでいてほしいというところから生まれたラインなんです。この1行がすべてくらいの想いでラップのリリックを書きました」

私ってどう見えてますか?というのを楽しみたい

■コントラストとおっしゃったように、ラップに入るまでのメロディセクションは、“いつもの自分に戻れるまで、私にオヤスミをください”くらいの、ゆるっとしたテンションで。歌表現もラップで鋭さを帯びるのに対して、メロディのところは息をたっぷり含ませたエアリーで、ディレイがかかった浮遊感たっぷりの囁き声というアプローチも気持ちが沈んでいる時にピッタリです。

「メロディを歌っているセクションは、やる気のないことを強調することで、やる気を刺激する。そのほうが自然に気持ちは上がってくると思っていたんです。5月病のように沈んでいる時、あんまりこってりした歌を聴きたくないですよね(笑)。あと、TVアニメ『ひきこまり吸血姫の悶々』エンディングテーマの“眠らない”でMIMiNARIさんと共演させてもらった時の歌い方を私自身、気に入っていて。自分の曲で出してみたかったんです。録ってからミックスで少し変わっていますけどね。意識していたのは、曲としてのまとまりがあって聞き流せる雰囲気です。だから歌に癖や表情を入れないようにしつつ、リズムを意識して歌っています」

■本当に、心をからにしつつ身を委ねていたい曲であり、歌声です。今後に目を向けると、日比谷公園大音楽堂と大阪城音楽堂で開催の初の夏の野外ライヴ『TOMORI KUSUNOKI SUMMER LIVE 2024 -ツキノミチカケ-』が発表になっています。演技と歌、表現者として挑戦したいことは溜まってきていますか?

「まず、この野外ライヴはある意味私の憧れを形にしたものです! たくさんあるやってみたいことのひとつで、運良く立たせていただけることになりました。声優として、挑戦というところで正直に言うと、以前ほど“こういう役に挑んでみたい”とか“この賞が欲しい”といった感情はそれほど強くないんです。それは、“安定”とまた違ったもので……演技のお仕事に向き合っているだけで幸せなんです。一つひとつの仕事に対して考えることが増えていますし、観てくださる方たちに楽しんでいただくことを第一に考えながら自分ができることをコツコツしていこうと思っています」
■腰を据えてじっくり自分とご自身の演技に向き合っている時期なのかもしれないですね。

「そうですね。自分は世界にとってこういう存在になりたい!みたいなところからこの夢が始まっていますから、声優デビューしてすぐの頃は、私のこと知ってもらわなきゃとか、こういう印象を持たれたい、といった想いは強かったですし、尖った目標がたくさんあったんです。そこから徐々にいろんな人に観てもらえるようになって、今は“楠木ともりはこうだよね”って見つけていただいている時間のような気がするんですよ。そこで、私ってどう見えてますか?というのを楽しみたいと思っています」

楠木ともり「MAYBLUES」Lyric Video

Keyword Q&A from 「MAYBLUES」 B-PASS online Ver.

Q1.〈がんばったセイなの〉より
■最近、“これはがんばった!”と自分を褒めたいことは?


「“MAYBLUES”は自分でコードをつけた曲なんです。昨年の11月に配信リリースした“back to back”が初めて自分でコードをつけた楽曲で。第2弾としてトライしたものの、“MAYBLUES”はメロディラインがシンプルな分、コードをつけるのが難しかったというか。単調になったり、オシャレにならなかったり。イメージは浮かんでいるのにそこに中々辿り着けなかったんです。それでも相談に乗っていただきながら完成まで持っていけたのは、がんばった!と思います」

■これまでは主メロを作っておられましたね。コードまでつけると最終的に思い描いているイメージに近づくといったような違いはありますか?

「今のところ作曲とコードをつけるのはまったく別の作業な気がしていて。まだ自分の中に落とし込めてないし、悩むことも多くて。コードをつけることで逆に行き詰まることもあります。ただ、ここはがんばっていきたいです」

Q2.〈オヤスミくださいな〉より
■オヤスミまでのルーティンを教えてください。


「明確なルーティンってないんですよ。挙げるとするなら……前にお話ししたストレッチを今も続けていますよ。声を使うお仕事は意識してない筋肉まで力が入っていたりするから。しっかり伸ばしてあげてから寝ます」

■ストレッチはかなり長く続いていますね。


「今となってはやらずに寝るほうが気持ち悪いくらいになっていますし、なるべく続けたいです」

Q3.〈やる気が起きないの〉より
■やらなきゃならないことがあるのにやる気が起きない。どう乗り切りますか?


「なにをやるかによりますね。だいたいのことに対しては、ファーストステップだけとりあえずやってみることを意識しています。例えばアフレコに向けた準備なら、Vチェック以外に、台本を読み込んで自分の出番をチェックして、修正を書き込んで……とたくさんの行程がありますし、そのすべてを考えると、気持ちが乗っていない時はいくら好きなことでも億劫になりますから。とりあえず台本を開く、とか、最初のハードルを低めにして。“始めてしまうと、人間ってスイッチが入る”という考え方をどこかで目にしたことがあるんです。本当にその通りですよね。最初の動作に取りかかってみて、それでもやる気が起きない時は、駄目なタイミングだなと自分で納得して、15分くらい寝るとか。一度リセットします」
New Single シンゲツ

New Single シンゲツ

2024.05.08 Release
フォトブック盤 CD+フォトブック+三方背ケース ¥2,530

初回生産限定盤 CD+BD ¥7,700

期間生産限定盤 CD+アニメ描き下ろしイラストポスター ¥1,650


通常盤 CD ¥1,430
[CD]
01. シンゲツ ※TVアニメ『魔王学院の不適合者 Ⅱ 〜史上最強の魔王の始祖、転生して子孫たちの学校へ通う〜』2ndクールエンディングテーマ
02. MAYBLUES
03. シンゲツ -Instrumental-
04. MAYBLUES -Instrumental-

[BD] ※初回生産限定盤のみ
01. シンゲツ -Music Video-
02. MAYBLUES -Lyric Video-
TOMORI KUSUNOKI LIVE TOUR 2023 『PRESENCE / ABSENCE』
2023.9.2 TOKYO DOME CITY HALL
01. presence
02. 青天の霹靂
03. ハミダシモノ
04. BONE ASH
05. バニラ
06. absence
07. もうひとくち
08. StrangeX
09. Forced Shutdown
10. 遣らずの雨
11. それを僕は強さと呼びたい
12. アカトキ
13. 眺めの空
14. 僕の見る世界、君の見る世界
特典映像:TOKYO DOME CITY HALL公演ライブドキュメント
楠木ともり
くすのきともり。'99年12月22日生まれ。東京都出身。代表作は『ソードアート・オンライン オルタナティブ ガンゲイル・オンライン』レン役、『遊☆戯☆王SEVENS』霧島ロミン役など。'20年8月、自身がヒロイン、ミーシャ・ネクロン役を務める『魔王学院の不適合者』のEDテーマ「ハミダシモノ」にてソロ・メジャーデビュー。今後は7月15日に日比谷公園大音楽堂、8月10日に大阪城音楽堂にて『TOMORI KUSUNOKI SUMMER LIVE 2024 -ツキノミチカケ-』を開催する。
https://www.kusunokitomori.com
Ani-PASS Plus #12〈シンコー・ミュージック・ムック〉

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¥1,650 (本体 1,500+税)
発売日 2024/04/22
サイズ A4判
ページ数 104ページ
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