通算3枚目、自主レーベルを立ち上げてからは初となるフルアルバム。光束(=光源からある方向に放射された光の明るさ)の量記号であり、直径を表す記号をタイトルに掲げた本作は、人間の瞳の大きさが直径12mmというところから付けられた「Φ12」をプロローグに、各曲の主人公達が“自らの瞳で捉えた光”をテーマにして制作された。光をテーマした楽曲と聞くと、まばゆいまでにキラキラと輝く明るいイメージを自然と思い浮かべることが多いだろう。本作にも、ドリームポップ的なまどろみをたたえつつも、軽快なビートを走らせる「オレンジとブルー」や、10年前に発表した楽曲を再録した「アンサーソング」など、ポジティヴな印象を受ける楽曲も収録されているのだが、それと同時に、気付けば変わってしまっていた心と、変わらずに巡ってくる季節を対比させながら描いた「遥か」や、別れの言葉を切り出せずにいる葛藤を、月明かりが照らす「Mooner」、心地よいテンポで進みながらも、心は遠い日の記憶の中で佇んでいる「BACKLIT」など、淡くて儚げな光を描いた楽曲も多い。そんな様々な光が描かれていく中、あの頃思い描いていた未来とは違うけれども、いまは幸せだと歌う「寝顔」の優しさに救われ、数えきれない欲望や矛盾を抱えながら生きていく「R」の誠実さが強く胸を打ち、凄まじい余韻を残す。彼らが紡ぎ出す美しい光に包まれて、その世界にどっぷりと浸ってほしい。(山口哲生)
album
11.7
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