“リリースおまっとぅりイヤー”を掲げた2023年を駆け抜け、前作から約8ヵ月というスパンで、早くもニューアルバムが到着! 聴く人の日常に小さなファンタジーを起こすことができたら――。そんな強い想いが込められた、ナオト・インティライミ、記念すべき10枚目のアルバム『ファンタジスタ』について。
Text 山口哲生 Photo 田中丸善治
Hair&Make-up Storm(Linx) Styling 三島和也、西川志津(tatanca)
1回本当に自分の好きな音楽をやってみようっていうところはあった
■音源のお話の前に、海外での活動の近況もお聞きしたくて。プエルトリコで飛び込みライヴをされたとのことでしたけど。
「マイアミで飛び込みライヴをしたら、評判が良くて。そのライヴのオーガナイザーがプエルトリコと繋がっていて、“あっちでイベントやるから”って。マイアミから連れていく5組と、プエルトリコの5組で10組が出るっていう話で、さぞかし大きいベニューでやるのかなと思っていたら、小さいバーでお客さん30~40人ぐらい。で、10時からって話だったけど、深夜2時ぐらい。でも、大きさとかは関係なくて。この中にキーマンがいたら、そこから何か起きていくっていうモットーでずっとやっているから。で、ブチ上げたら案の定、その中にザイオン&レノックスという、Spotifyで月間リスナー1800万ぐらいのレジェンドの服とかをやっているデザイナーがいて、“とんでもねぇのを観た”ってザイオンに紹介してくれて。で、ザイオンと会ったら、“お前おもろいね”って、スタジオを連れ回されたり、フェスに行って“ちょっとこいつ歌わせてやってくれ”とか。そこから今もいろんな話をしているんだけど」
■おおー! すごい展開に。
「でも、この奇跡的なことが起きたのは、そもそも飛び込みで出たマイアミのライヴから始まっていて。インディでやってる友達が誘ってくれて行ったわけ。13組ぐらい出るイベントだったんだけど、観てたらウズウズしてきて(笑)」
■(笑)。血が騒いだと。
「オーガナイザーを教えてもらって。俺、日本の歌手なんだけど歌えないかな?って聞いたら、“ゴメン。今忙しいから、インスタに資料送っといて”って。それはわかったと。“ちなみに次のイベントは?”“2ヵ月先”。いや、2ヵ月は待てんなぁ、どうしようかな……で、“15秒だけこれ聴いて?”って、自分の曲を聴かせようと思って。”なんだよ、忙しいんだけど……(ため息をつきながらヘッドホンで曲を聴き、大きく手を叩いて)行こう。この休憩の次、お前行こう!”って」
■マジで漫画の世界じゃないですか(笑)。
「すぐにDJのところに連れて行ってもらって、“次こいつが行くから”って。で、DJにエアドロで音源渡して、じゃあこれでよろしく!で、もうステージに立ってた」
■そのイベントに出るのが決まったのは、本番何分前だったんですか?
「5分前」
■めっちゃ直前!!(笑)
「いつでも準備できてるから。で、終わってから、さっきまで忙しいって言ってたオーガナイザーが、“スタジオあるんだけどいつ空いてる?”って。そこから数ヵ月後にプエルトリコの話になったんだけど。普通は友達のライヴに行ったら、そのまま帰るでしょ。そこの粘りと情熱で扉をこじ開けたという」
■決まっていくスピード感もすごいですね。
「そこはラテンの感じだね。面白いものに対してのクイックな動き。でもまぁ、依然として向こうは厳しい戦いではあるよ。昨年4月から改めてやり始めて、まだ1ドルも稼げてないから。でも今はしっかり準備して、いつか攻め込むタイミングのために繋がりを作っている、耕している状態ですかね」
■海外でそういった活動をしつつ、日本でも本気で活動をするというお話は以前からされていましたし、ある意味その有言実行で、10枚目のアルバム『ファンタジスタ』を、前作から9ヵ月というスパンでリリースされるわけですけども。ちなみにその前作『アドナイン』は、前々作の『虹色∞オクターブ』から8ヵ月しか経ってなかったんですよね。
「バカなの?」
■(笑)。去年は“リリースおまっとぅりイヤー”と題して、月1以上のペースで配信シングルを出してきたのもあり、今年はさすがに落ち着くのかなと思いきや、アルバムという。
「やっぱりツアーが大きいよね。全国を廻る前に1枚出しておきたいっていう。そこはずっとアルバムアーティスト、ライヴアーティストとして紐づけてきたから。だから、たまたまではあるんだよ。去年夏にツアーをやって、今年は春ツアーだから、まだ1年経ってないっていう。それに球もまだあるしね」
■とはいえ早くないですか?(笑)
「まぁね(笑)。大変ではあったけど」
■1曲目は「Funky Music」。冒頭のお話の通り、ナオトさんは現在ラテンミュージックの本場での活動もされていますけど、ファンクもナオトさんの音楽にとって重要な要素の1つですよね。
「やっぱりファンクはルーツに大きくあるからね。家にある三千何百枚のCDの二千枚ぐらいは、70年代のファンク、ソウル、ディスコじゃないかっていうぐらい、そこに傾倒してたから。配信シングルを月1以上のペースで出してきて、最新の音楽を自分なりにいろいろアプローチをしていく中で、1回本当に自分の好きな音楽をやってみようっていうところはあったかも。商業的なことは一切考えず、無邪気に作ったらこうなったという」
■冒頭に入っている賑やかなお店の音は?
「あれはマイアミ。キューバンコミュニティで、毎週火曜日に行っているオープンマイクのところがあるんだけど、そこで録った。iPhoneにマイクつけて、セッションに近づいていって。ああいうセッションって、日本ではやってるところ少ないけど、毎日どこかのバーやクラヴやレストランで、必ず生バンドがやってるから。やっぱ
り音楽の文化がすごいよね」
■歌詞には、ファンクレジェンドの名前や、名曲のタイトルが散りばめられています。
「ナオトファンク史をそのまま書いた。“ブギー・ワンダーランド”から始まって、あれはアース(・ウィンド&ファイアー)のファンクからディスコへの移行期の曲だけど、そこからどうのめり込んでいったのかを綴っただけだから、ストレスがなかった(笑)。自分のファンク史、ファンク愛を書くだけっていう」
■Bメロに出てくる〈GくんやSくん〉というのは?
「Gくんはジョージ・クリントン。パーラメントとかファンカデリックの。これはもうごっそりハマったし、Sくんはスティーヴィー・ワンダーと、スライ&ザ・ファミリー・ストーン。この辺の影響はすごく大きいね。Jくん=ジェームス・ブラウンもいるけど、全部書くととんでもない数になるから」
■ライヴで間違いなく盛り上がるでしょうね。コール&レスポンス的なところもありますし。
「〈N・A・O・T・O〉のところはK-POPグループの掛け声だね」
続きはB-PASS 2024年6月号でお楽しみください!!
ナオト・インティライミ
三重県生まれ、千葉県育ち。’10年4月、シングル「カーニバる?」でメジャーデビュー。’23年7月、9thアルバム『アドナイン』をリリースした。現在、全国ツアー『ナオト・インティライミ LIVE TOUR 2024 SPRING』を開催中。7月10には『ナオトの日 スペシャルLIVE 2024~今年は渋谷で「アレ」やります!めざせ!世界のセンターGuy!!~』を開催予定。
公式サイト
https://www.nananaoto.com/
通常盤 CD ¥3,300
[CD]
01. Funky Music
02. MoonLight
03. ミコラソン(feat. Novel Core)
04. First Christmas(Album ver.)
05. Level 44
06. にたものどうし
07. 夕暮れノスタルジー
08. ジャイアントキリング(with 木梨憲武)
09. やんなっちゃうよな(with meiyo)
10. 桜小町(2024 ver.)