自分の純粋に「火をつけろ」、そして一緒に戦おうと宣言したら、続く「梅田の夜」で〈人生変えてくれたHipHop 私のくくりはジャパニーズポップス becauseルーツは演歌と歌謡曲〉と改めましての自己紹介。3曲目の「祭 feat.Mummy-D」で人生を変えた張本人・Mummy-Dとともにビートを刻み、自分たちの音頭を熱量MAXで響かせる。かと思えば、人間関係で身動きが取れなくなった聴き手を、そっと「白昼夢」に誘い込んでメロウな歌声で添い寝したり、「究極の休日」に連れ去って有無も言わさず踊らせたりもする。忘れてしまいたい過去も、明らかに無駄な経験も、もう一生会わないかもしれないあの娘も、全部があって今の自分がある。ご縁が連なり、全10曲が円となって1曲目に戻っていくようなエンディング「一円なり」の余韻はただひたすらにやさしい。同郷(と言っても神奈川)のさらさの歌声と伊澤一葉の鍵盤とカワムラヒロシのアレンジ、異なる才能と溶け合うことで、10年前の名曲「雪模様」が今作に収録されることになったのも偶然じゃないんだ、きっと。2年10ヵ月ぶり、メジャー7枚目にして2度目のデビューアルバムみたいな佇まい。というか、音楽こそが日常で、日々の出来事や人との出会い、そこで生じる自分自身の変化すらも、なんなら生まれ変わるほどの衝撃だって恐れず気負わず楽曲に刻んで、一番気持ちいい表現で歌い奏でる。その覚悟に満ちたNakamuraEmiだから、この後の作品はずっとデビュー作っぽく感じるのかもね。(山本祥子)
album
NIPPON COLUMBIA
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