前作から約2年ぶりとなるフルアルバム『航海士』をリリース! デビュー5周年イヤーという節目のタイミングで届けられた本作には、活動初期の未発表曲から最新曲まで、彼の軌跡を辿るように全12曲をコンパイル。さらなる大海へと進むTani Yuukiの決意が込められた充実の1枚について。
Text 小松香里
Photo 木村辰郎
Hair&Make-up たるみえれな
■アルバムタイトル『航海士』と、リードトラックの「後悔史」というタイトルにはどんな想いが込められているんでしょう?
「デビュー5周年ということで、これまでの歩みを振り返りつつ、原点回帰もして、これから先の未来を見据えるというテーマのもと、アルバム制作をしました。僕自身を形作るものってどこから始まったか考えると地元が海の近い神奈川の茅ヶ崎で。海に関連した言葉でこれからを切り拓いて突き進んでいく意味を込めたいなと思って、自分で自分の人生の進路を決めるっていう想いを込めてアルバムタイトルを『航海士』にしました。表題曲は同じ語感の“後悔史”という曲なんですが、これまでの失敗や後悔を改善していくことで成長したり、新しいものを開拓していくことができたと思っていて。パッと見、ネガティブなタイトルに思えるかもしれないですが、アルバムのタイトルと同じで後悔の歴史をもとにこれからの進路を切り拓いていくっていうポジティブな意味が込められてます」
■原点回帰という考えから学生時代に制作したという「everyday」「Dear drops」「自分革命」「最終想者」を収録したところもあったんですか?
「おっしゃる通りです。その4曲は昔の曲だけあってちょっと蒼かったり幼いなって思う箇所があるんです。特に“Dear drops”は高校生の時に初めて作った曲なんですけど、Tani Yuukiの歴史の始まりを見てもらうなら原点をちゃんと提示できたほうがいいなと思って収録しました。自分でアレンジができなかった頃に弾き語りで作った曲なので今回収録するにあたってアレンジしましたね」
■歌詞は当時のままですか?
「そうです。以前、昔の曲を改変してそもそものコンセプトを根本から崩しちゃったことがあって。そこで昔の曲はなるべく変えないようにっていう基準ができたんですよね。蒼さや若さを感じる歌詞もアレンジしたことによって、わりと今の等身大で歌えるなって思いました」
■涙や別れが描かれていますが、実体験に沿った歌詞なんですか?
「“シンガーソングライターを目指してるなら何か歌ってよ”って言われると、自信満々で中島みゆきさんの“糸”を歌ってた時代があるんですけど。とある人から“オリジナル曲がないとダメじゃない?”って言われて、確かに!って思った日がありまして。その時に友達が最初のセクションの〈この瞳で見たどんなに残酷な景色も 涙だけで洗い流せたら この世界は毎日美しいのに〉っていう言葉をくれて、“この言葉を基に曲を作ってくれないか?”って言われたので、その言葉を膨らませて作詞しました。きっとこの言葉にはこういう想いを込めてるんだろうなとか、泣きたいけど泣けないんだろうなとか考えて」
■「everyday」を1曲目にした理由は何だったんでしょう?
「目覚ましの音から始まって目が覚めるところから始まる曲だからっていうのが大きかったですね。落ちサビの前に電車の走る音が入ってるんですが、去年やった『HOMETOWN』ツアーのモチーフが汽車なので、その余韻を感じつつ、2曲目の“後悔史”で一気に航海が始まって、9月からの『Still love...this』ツアーの始まりっていう流れをイメージしました」
■歌詞はTaniさんの学生時代の通学に対する想いが込められているんでしょうか?
「そうだと思います。なんか可愛らしい曲ですよね。電車に乗っている情景とかが描かれてて。当時の僕の朝起きて学校に行って帰ってくるまでの1日を歌っているようにも思いつつ、自分の父親が朝会社に行くのがすごい億劫そうなのを見てたので、その姿も重ねて書いてる気もしますね。通学だけじゃない感じがちょっとしてます」
■「everyday」にはストリングスとかも入っていますが、アルバムの1曲目に入れることを想定してアレンジしていったんですか?
「はい。歯磨きやトースター、洗濯機の音とか身の回りの生活音を入れてリズムトラックを作って。日常を繰り返していく中でどうしても笑えない時もあるよねっていう展開のところでフラッシュバックするように、これまで出てきた日常の音がまた出てくるのがいいんじゃないかってアレンジャーの宮田“レフティ”リョウさんと話し合いながら作っていきました。歯磨きの音は僕が何パターンかサンプリングして録って、レフティさんに乾いた歯ブラシと歯磨きが粉付いてる歯ブラシとか、いろいろな歯ブラシの音を聞き比べてもらって、結果“歯磨き粉が付いてる濡れてる歯ブラシの音がいいね”みたいなやり取りをして詰めていきました」
■「kotodama」での生きることに対する迷いや諦めが「他人り事」では自分なりに1つの結論を出しているような流れになっていますよね。
「そうですね。そんなこんな言うてますけどもどれも私の独り言です。気にしないでね、みたいな感じかもしれないです」
■“ひとり”に“他人”という漢字をあてたのはどうしてだったんでしょう?
「悩みって他人ありきの物が多いと思うんですよ。独り言は1人のことだけじゃないっていう意味を持たせたかったので、“他人”っていう漢字を使いました」
■「他人り事」はTaniさんにとっての生きることとは?というのが凝縮されていると思うんですが、どこに一番自分のパーソナリティが出てると思いますか?
「箇条書き感っていうのはありますよね。昔からこの曲の最後のセクションの〈私が私であるように あなたがあなたであるように〉みたいなことを歌ってきてると思います。それと、人は18歳くらいの物心つくまでの出来事がその人の常識を作るって言いますけど、この歌詞に入ってる〈人は鏡〉とか〈隣の芝は青く見える〉っていうことみたいに、自分の親や祖父母から受け継いできたような言葉を歌詞に入れるあたりは僕っぽいなって思います。『HOMETOWN』ツアーはTani Yuuki史上規模的にも長さ的にもクオリティ的にも最高だったんですが、ツアーが終わった後、清々しいくらいやりきった感があったんです。サウナで整ってる感っていうか。そこでまたアウトプットするためにはインプットしないといけないって思ったところもあって、自然が多めの見知らぬ土地に行ったんです。都会ではないんだけど、喫茶店や雑貨屋さんとかがあって、それなりに生活感があって。自分の好みの洋服屋さんをたまたま見つけて、たまたま欲しいものもあったりして。1回やり切って空になった状態から好きなところに行って好きなことをして好きなものだけ持って帰ってきて生まれたのが” 他人り事”でした。その時間で整理できたものや新しく得るものや答えを出せるものがあったんでしょうね」
■すっきりした状態で自分と向き合って出てきた歌詞なんですね。
「はい。26歳の若僧が何を言っているんだって思われるかもしれませんが、26年間生きてみて、そしてその中で5年間音楽活動をやってみて、今出してみた答えはこんな感じですっていう。僕の人生の教訓みたいな曲だと思います」
■サビの歌詞が4行あって、1行目は〈生きて、生きて、生きて行くこと〉ですが、2行目で死ぬことに向き合って、でも3行目と4行目はまた生きることに向き合っているのが気になったんです。
「“死”っていう言葉はあまりにも強いのでなるべく使いたくないとは思っているんですけど、僕の曲を聴いてくれている人の中には何かしらのご病気に罹られている方だったり、ともすれば余命宣告を受けている方、この5年の間に既にいなくなってしまった人もいて。僕のここまでの音楽人生を語る上でそういう方々の存在も一部であり欠かせないんですよね。こういう方向性の曲を書こうとするとやっぱりそういう人のことも書いておきたくなるんです。ちょっと綺麗事かもしれないですが、この曲の中に生きていてくれている気がするので。”後悔史”みたいにネガティブに込めたポジティブみたいな感じなんですけど生きることと死ぬことは別に人ごとじゃなくて、自分も含めて今生きている人たち全員に等しくあるもので。子供の頃に、死んじゃったら最後どこに行くんだろうか?って考えたことがあると思うんですけど、やっぱり死ぬことは怖いし、嫌だと思ってもいつかはその時が来てしまう。それをいつか受け入れていくのかな?とか、今できることを精一杯やっていたらもしかしたら受け入れられるのかな?って思ったり。また別の場所で出会うことができるかもしれないっていう意味合いも込められているかもしれないですね。“Survivor”っていう曲もアルバムに入っていますが、生存者もいれば離脱してしまった人もいて、生死で分かれてしまっている。“他人り事”の1番2番3番、それぞれのサビの歌詞は若干ニュアンスが違って。例えば、最後のサビの歌詞は、ある時に心が死んで笑うことができなくなってしまってもまた取り戻すことができるっていうニュアンスで書いてるんです。曲を聴いてくれる人それぞれの捉え方があっていいんですけどね」
続きはBACKSTAGE PASS 2025年8月号でお楽しみください!!
『谷勇輝アワー 歌っていいとも! ファンクラブツアー2026』
2026年4月18日(土)京都・KYOTO MUSE
2026年4月25日(土)広島・LIVE VANQUISH
2026年4月26日(日)香川・高松DIME
2026年5月4日(月・祝)宮城・仙台darwin
2026年5月6日(水・祝)北海道・旭川CASINO DRIVE
2026年5月15日(金)茨城・水戸LIGHT HOUSE
2026年5月24日(日)熊本・熊本B.9 V1
2026年5月31日(日)石川・金沢AZ
2026年6月5日(金)静岡・LIVE ROXY SHIZUOKA
2026年6月10日(水)大阪・BIGCAT
2026年6月19日(金)東京・恵比寿LIQUIDROOM
https://taniyuuki.com/feature/taniyuuki_fanclubtour2026
Tani Yuuki
タニユウキ。’98年11月9日生まれ、神奈川県・茅ヶ崎出身。男性シンガーソングライター。’15年より音楽活動を開始し、’20年に発表した「Myra」が注目を集める。’22年4月に1stアルバム『Memories』、’25年6月に最新アルバム『航海士』をリリースした。’26年4月より『谷勇輝アワー 歌っていいとも! ファンクラブツアー2026』を開催予定。
公式サイト
https://taniyuuki.com/
初回生産限定盤 CD+BD ¥6.380
通常盤 CD ¥3,630
01. everyday
02. 後悔史
03. kotodama
04. 他人り事
05. Dear drops
06. アンタレス
07. 械物
08. Survivor
09. 吾輩は人である
10. 最後の魔法
11. 自分革命
12. 最終想者~アンカー~
https://kmu.lnk.to/Koukaishi