ジャンルを超越した音楽×映像×アートを創造するクリエイティブミクスチャーユニット・NIKO NIKO TAN TANに、B-PASSが初接触! 今年5月のメジャーデビューから早くも届けられる1stアルバム『新喜劇』の制作について、ユニットの音楽面を担うOCHAN、Anabebeの2人に話を聞いた。
時が経って、アルバム全体を見渡すと、傍観すれば喜劇にもなるんだなと感じた
■メジャー1stアルバム『新喜劇』がリリースされます。フルアルバムを作るにあたって、テーマなどはあったんですか?
OCHAN「特にテーマがあったわけではないんですけど、このタイミングでアルバムを出すのは決まっていたし、いろんな曲を作りながら意識はしていて。家を建てるようなイメージで、1曲1曲に対して”この曲は家の中のどこに置こうかな”みたいなことを考えていたんですよ、勝手に」
■曲が揃ってから“どうやってまとめるか”ではなくて、曲を作りながらアルバムの全体像を構築していたと。
OCHAN「そうですね。あくまでも自分の中でのイメージなんですけど、“この曲はリビングかな”“これは暖炉の上がいいな”っていう(笑)。僕も好きなアーティストはアルバムで聴きたいタイプなんですよ」
Anabebe「俺もそうやな」
OCHAN「“モノ”も好きなんですよ。2020年に出したアルバム(『微笑』)はデジタル配信だけだったので、今回CDを作れたのはうれしいですね」
Anabebe「確かにモノが欲しいよな」
OCHAN「マンガも紙で読みますからね。小説はデジタルで読んじゃいますけど(笑)、アルバムは手に取ってほしいです」
■アルバムの前半には「Smile」「新喜劇」「Only Lonely Dance」「四時が笑う」などの新曲が収録されていて。インタールードの「八」を挟んで、「IAI」「可可 feat. ぷにぷに電機」「MOOD」「カレイドスコウプ」などのシングル曲を中心に構成されていますね。
OCHAN「確かに。曲順としては、一番新しいシングル(「No Time To Lose」)は最後に置こうと決めていたんですよ。既存曲では“IAI”を第2幕の一発目に持ってきたくて…… という感じでハメていくうちに、自然と新曲が前のほうになったんです。あと、一番の自信作である“新喜劇”を最初に聴いてほしいというのもありました」
■特にアルバムのタイトルトラック「新喜劇」は大きな軸になってますよね。
Anabebe「だいぶ前からあった曲なんですよ、実は」
OCHAN「もともとのネタというか、アイデア自体はアルバムの中で一番古いですね。ずっと寝かしていたというか、なかなか形にする機会がなくて。このタイミングでようやく完成したんですけど、結果的に一番新しい感じの曲になりました。テンポもだいぶ上げたよな?」
Anabebe「(BPMを)8くらい上げたんちゃう? 最初はめっちゃドープな感じやったから」
OCHAN「山奥でやってるフェスの深夜の時間帯に合うような(笑)。そういう曲も好きなんですけど、もっとポテンシャルあるよなと思って。テンポを上げてみたら全然違うように聴こえてきて“いけるな”と。アルバムのタイトルを『新喜劇』にしようというのは決めていたので、それを背負うような曲にしたかったんですよね。メロディや歌詞もしっかりハマったし、アルバムのすべてを表わしている曲と言っても過言ではないなと。現時点での最高傑作ですね」
[L→R]OCHAN(Vo.&Synth)、Anabebe(Dr.)
■なるほど。アルバムのタイトルを『新喜劇』にするというのは、制作前から共有されていたんですか?
OCHAN「いや、最初は僕が1人で考えていて。アルバムの段取りを決める時にみんなに伝えました」
Anabebe「タイトルを聞いた時は、頭の中で“ほんわかっぱっぱ~”(吉本新喜劇のテーマ)が鳴りました(笑)」
OCHAN「そうやろな(笑)。ライヴのアンコールでアルバムタイトルを発表したんですけど、“ぷっ(笑)”ってなってたし。NIKO NIKO TAN TANという名前を付けた時も同じような反応だったんですけどね」
Anabebe「誰に言っても“え?”っていう(笑)」
OCHAN「ハハハ。『新喜劇』も自分達にはすっかり馴染んでるし、吉本新喜劇とは違うものになっていて。普通に“アルバムタイトルは『新喜劇』です”って言って、みんなに驚かれるという。最初はビックリするかもしれないけど、だんだん普通になっていくと思うんですよ。そういう言葉が好きなんです。“電気グルーヴ”とかもそうじゃないですか」
■確かに。
OCHAN「小説のタイトルとかもそうですけど、相反する言葉を組み合わせると目を引くみたいで。アルバム4曲目の“四時が笑う”も、そういう発想で付けた曲名なんですよ。“四時が笑う”って意味がわからないじゃないですか(笑)」
■そうですね(笑)。ちなみに、資料には「人生は近くで見ると悲劇だが遠くから見れば喜劇である」というチャップリンの言葉が引用されていて。これもアルバムのテーマの1つなんですか?
OCHAN「そうですね。僕はいつもタイトルを先に決めるんですよ。今回のアルバムも『新喜劇』というワードを決めてから、いろいろ調べて、自分がやろうとしていることの糸口を探って。その中で腑に落ちたのがチャップリンの言葉だったんですよね。アルバムに入ってる14曲にはそれぞれストーリーがあるんですけど、作った時期もバラバラなんですよ。作った時のことをすべて覚えているわけではないけど、悲しい時とか落ち込んだ時に作った曲もあって。つまり悲劇的な感じもあるんだけど、そこからちょっと時が経って、アルバム全体を見渡すと、傍観すれば喜劇にもなるんだなと感じたんですよね。そこが収録曲の共通点だなと思ったし、すごく繋がるものを感じたんですよね」
■前向きなテーマですよね。悲劇的な経験をしても、時が経てば喜劇にもなるという。
OCHAN「そう捉えてもらえるといいなと思ってます。その時はキツいかもしれないけど、何年か経てば笑えるかもしれないし、このアルバムを聴いてくれた人がそういう気持ちになってくれたらなと。ただ、“全部楽しくなる”ということでもなくて。悲劇と喜劇、キツいことと楽しいことが相対しているというか、2つの見え方があるという感じなんですよ。それぞれの立場が交わらなくてもいいのかなと。自分の中では映画『ジョーカー』のイメージもあって。あの映画でチャップリンの『モダン・タイムス』が引用されているんですけど、それもヒントになっているというか。『ジョーカー』は思いきり暗いほうにいっちゃうんですけど、そこは紙一重なのかなと」
■悲劇と喜劇は表裏一体でもある、と。ちなみにお2人は、キツいことがあったときに笑い飛ばして前に進めるタイプですか?
Anabebe「だいぶ気にしちゃいますね。次にいこうやって口では言うけど…… 」
OCHAN「結構繊細(笑)。僕は頑張って次にいこうとしますね。NIKO NIKO TAN TANの活動もそうなんですけど、目標を決めて、這ってでもそこに向かっていくというか。1曲目の“Smile”はインストみたいな短いトラックなんですけど〈ハッピーエンド〉と言ってて、そのあと〈視えるのかい? 視えるのかい? 走れ〉っていうフレーズがあって。要は、ハッピーエンドを望んでるんだけど最後はどうなるかわからない、みたいなことを最初に描いているんです。そこから“新喜劇”に繋がるんですけど、あとはその人の生き方次第というか」
■「新喜劇」にも〈大どんでん返しに期待したい気分さ〉という歌詞がありますね。
OCHAN「そうですね。この曲の主人公も、何かに向かって進もうとしているし、めちゃくちゃもがいているので。それでもハッピーエンドを願っているんですよ」
■そのストーリーは、お2人の音楽活動ともリンクしているんですか? 音楽を生業にするのもかなり賭けだと思うので……。
Anabebe「ホントそうですね(笑)」
OCHAN「修羅の道っす(笑)。それをニコニコしながらやってる…… ちょっと道化みたいですよね。キツい状況やつらいことがあっても、ライヴになれば楽しく演奏しますから。そのことをわかってほしいと思ってるわけではなく、ピエロみたいな側面もあるというか。それも裏と表だし、やっぱり『新喜劇』というタイトルはすごく合ってると思います。新しいステージに行く感じもあるし」
■しかもサウンド自体はダンスミュージックが軸になってますからね。このアルバムも気持ちよく踊れる曲が中心ですが、それはやはりNIKO NIKO TAN TANの基本的なスタンスなんでしょうか?
OCHAN「そうですね。ダンスミュージックにインスパイアされることが多いし、踊れる音楽というのが自分達のカラーになっていると思います」
Anabebe「(音楽の)入口は違うんですけどね。最初に興味を持ったのはプログレとかハードロックだったので」
OCHAN「ドリーム・シアター(アメリカのプログレッシブメタルバンド)やろ?」
Anabebe「そう。兄の影響でイエス(イギリスのプログレバンド)とかも聴くようになって。OCHANと共通しているのはマーズ・ヴォルタ(アメリカのポスト・ハードコア系バンド)」
■マーズ・ヴォルタはプログレの要素もありますね。
OCHAN「カオス・プログレみたいな感じですよね。マーズ・ヴォルタは本当に2人とも大好きだし、あとはレッチリとか。僕はシガーロスやビョークとかも好きなんですよ」
■アイスランドのミュージシャンに惹かれる?
OCHAN「そうかも。暗いけど、めっちゃ美しいというか。そういう音楽にはずっと惹かれてるし、それはたぶんNIKO NIKO TAN TANで自分が作ってる曲にも反映されていると思います。ダウナーなダンスチューンも結構あるので」
続きはBACKSTAGE PASS 2024年9月号でお楽しみください!!
『NIKO NIKO TAN TAN ONE-MAN TOUR 2024「新喜劇」』
2024年10月18日(金)大阪・Music Club JANU
2024年10月26日(土)愛知・新栄シャングリラ
2024年10月27日(日)福岡・BEAT STATION
2024年11月4日(月)北海道・Sound lab mole
2024年11月23日(土)宮城・仙台MACANA
2024年11月29日(金)東京・LIQUIDROOM
https://nikonikotantan.fanpla.jp/news/detail/32421
NIKO NIKO TAN TAN
ニコニコタンタン。’19年結成、音楽×映像×アートを創造するクリエイティブミクスチャーユニット。OCHAN(Vo.&Synth)、Anabebe(Dr.)が音楽を担当、Drug Store Cowboyが映像・アートワークのプロデューサーを務める。’21年9月に本格始動後、’22年6月にEP『?』を発表。’24年5月、メジャー1stシングル「MOOD」を配信リリースした。
公式サイト
https://nikonikotantan.fanpla.jp/
通常盤 CD ¥3,300
01. Smile
02. 新喜劇
03. Only Lonely Dance
04. 四時が笑う
05. ハナノヨウ
06. Jurassic
07. Paradise
08. 八
09. IAI
10. 可可 f eat. ぷにぷに電機
11. MOOD
12. カレイドスコウプ
13. 琥珀
14. No Time T o Lose
https://amzn.asia/d/5tx2020uEn