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光になる歌を届けたい──Aimerニューシングル 「Sign」インタビュー

Interview

2024.09.13

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5年ぶりとなる海外ツアーを成功のうちに終え、10月からは全国10都市19公演を廻るホールツアーを控えるAimer。勢いそのままに届けられた最新シングル「Sign」に込めた想いについてじっくりと聞きました。
Text 山本祥子

“Sign”は中心にある寂しいとか、切ないとか、傷ついた部分の周りをそっと包んであげている曲

■ニューシングル「Sign」、大好きです。

「嬉しいなぁ。ちなみにどんなところがお好きですか?(照)」

■〈心の傷はもう跡を残すだろう〉「Sign」。〈傷つくとしても 声枯らしても 叫び続けたい〉「Wren」。〈もう何度 傷ついた心を見て〉「月影」。収録曲すべてに〈傷〉という言葉が登場するけれど、心の傷がテーマかと言うとそうじゃなくて。傷を背負ってどうとかでもなく、傷も自分の一部として生きていく姿、意志が詰まった作品だなと感じて。


「まさに、その通りだと思います。まずタイトル曲の“Sign”は、人前で歌うことができるようになったし、海外ツアーが決まったタイミングでもあったので、自分の舞台がもっと先にあるというのを踏まえて作った曲で。そしてこの曲がオープニングを飾るアニメ『狼と香辛料』は、ひょんなきっかけで出会ったロレンスとホロが、行商をしながら一緒に旅を始めて、仲を深めていく物語なんですけど。私が担当する第2クールには2人が仲違いするエピソードがあって。最終的に仲直りして前へ進んでいくとは言え、いろいろなエッセンスが詰まった作品だから、2人の繋がりにスポットを当てた曲にしてもいいのかなぁと思って」

■絡まった線をほどいて、結び直して、絆を強めていく情景が繊細に描かれていました。

「原作小説に何度も出てくるんですけど、ホロちゃんが“1人はイヤだ”って言うんです。彼女は狼の化身で、麦の豊作に尽くす神様だったから、人間とは寿命が違うし、どうしても独りぼっちになっちゃう。手塚治虫さんの『火の鳥』にもそういうお話があって。不老不死になって喜んでいた人が、周り全員が死んでいく現実と孤独に苦しむっていう。一方でロレンスは行商人で、ずっと1人で旅をしてきたから、やっぱり密かに寂しい想いを抱えていて。だからこそ2人が出会ったことに意味があって、お互いがかけがえのない存在になっていく。これって私もそうだし、きっとみんなそうだよなぁと思う。引いて言えば、その孤独は決して埋まらないから、誰かと一緒にいるんですよね」

■埋まるはずがないってわかってるけども。


「はい。生まれる前から孤独を握っていて、死ぬまで抱えて生きていく。それは悲劇的な話ではないし、むしろすごく自然なことだよねって想いがあります。そういう気持ちも込めたので、最初に言ってもらったように、傷ついた経験を大袈裟に背負っていくというより、あたり前のものとして受け入れてっていう意志は、“Sign”にもあったし、今回のシングルには間違いなくあります」

Aimer「Sign」MUSIC VIDEO

■あと〈でも君と出会った 星たちが流れる夜に〉というフレーズを聴いた時に、以前、「ターニングポイントを挙げるなら、玉井(健二)さんとの出会い」と話していたことを思い出したんです。

「あぁ、なるほど」

■前作はAimerらしさより作品の完成度を優先させたと言ってたけど、この曲に関しては、Aimerという人の軌跡だったり、アーティストとしての旅路みたいなものをすごく感じるなっていう。

「言われてみると、と言いますか。今回のシングルはわりと今までの系譜から近い場所にいるし、なんなら少し戻してっていうのをね、意識したところもあります。今はファンの方がいてくれて、結びつきもどんどん強くなっていて、とても嬉しくて。けど“六等星の夜”を歌い始めた時って、誰が聴いてくれているかわからないような感じだったし。私の音楽を聴いてくれる人って、それこそ心に傷を抱えた人が多いのかなと思っていて」


■そういう手紙をいただくんですもんね。


「だから重なる部分がかなりありました。ロレンスとホロはたった1人同士じゃないですか。1人と1人が2人になるって、数としては若干の違いだけだけど、ものすごい大きな差で。それが私の中の音楽にもあって、そうやって歩いてきたなって思いました」
■だから聴き終えた余韻も含めて、響かせているのは希望だなって思う。

「確かに。昔だったらもうちょっと相反するもので、光が多かったら闇を強くしたいなぁとか。そうやって同じくらい、あるいは闇の方を濃くしたいと思ってしまったかもしれない。でも今は普通に生きていても、苦しかったり、心のどこかで傷ついていたり、みんな抱えている重荷があるから。“Sign”は中心にある寂しいとか、切ないとか、傷ついた部分の周りをそっと包んであげている曲ですね」

■それを歌声で表現する際にイメージしたことというのは?


「一生懸命にというか、あえて少し苦しそうにというか」


■ブレスの生々しさったら!

「感じましたか?(ニッコリ) 余裕しゃくしゃくで歌う曲ではないので、必死に繋いでいるんだよっていう歌い方にしたかったんですね」

■超個人的な感想を言うと、〈似た者同士〉の“お”のところに毎回グッときてます。

「おぉ、めっちゃマニアック! けどわかります。“どおしぃ(同士)”の歌い方ですよね。いいですね。こういう“超個人的なポイント”をファンの人にも聞いてみたいです」


■〈隣にいてほしい〉のまっすぐ伸ばした後のビブラートからは迸る願いのようなものが伝わって来るけど、〈似た者同士だった〉はもうね、手をぎゅっと握られるっていうか、仲間に入れてもらえる感じがするんです。

「この〈似た者同士〉はきっといろんな歌い方ができますよね。でも自分らしいんじゃないかと思います。ちょっと語りかけてるみたいな、愛があるっていう感じ。うん、なるたけの愛を込めましたね」

■このテンポ感はロレンスとホロが乗る馬車の速度だよなぁとか、構成する要素はきちんとアニメに寄り添っているのに、どうしようもなくAimerの曲じゃんって、さっきの話に戻っちゃった(笑)。


「めちゃくちゃしあわせです。そう、ちゃんと私の曲になったなと思います」

誰かにポジティブな影響を与えることができるのなら、光になる歌を届けたい

Aimer「Wren」Lyric Video

■2曲目の「Wren」はどういうとこからスタートしたんですか?


「カップリングはどんな曲にしよう?って考えた時に、制作が海外ツアーをやっている最中だったので、アッパーな曲を入れてもいいかなっていう」

■海外ツアーって6月、7月に廻った? 鮮度が高すぎません!? しかも私、これもタイトル曲でいいですよって思ってます。


「えーっ、ほんとですか?  アニメのオープニングっぽいのかな」

■淡々としたリズムに畳み掛けるみかけるヴォーカルは、Aimerの魅力的な武器であり、真骨頂の1つだから。


「ありがとうございます。この曲はですね、自分の感覚として、いい意味でリラックスしてというか、余計な力を入れずに歌いましたね」

■余計な力を入れず、〈喉に奥に残る 苦みに今更気づいて 答えのない問いを 懲りもせず繰り返している〉んですね。


「音楽を続けていく限り、どうしたって自問自答は繰り返すものだし。これでいいのかなとか、もっとこうあるべきじゃないかとか、自分の現在地について考えてしまうし。それでちょっと弱気になったりもするしね。特に海外ツアーに出た時には、そういう瞬間が自分の中で何度かあったので、そこから作っていきました」

■後悔したり、諦めようとした経験がある人の曲だなと思ったし、でも 過去の曲よりも明らかに諦めが悪くなっているとも思った。


「あはははは。そうなんですよ。やはりここまで歩いてきて、この先も執念深く歩いていくしかないっていう想いはあります、強く強く」


■まさしく〈I reach for the light〉、多く人の光になり得る曲なんじゃないかな。


「自分が誰かにポジティブな影響を与えることができるのなら、光になる歌を届けたい。しっかり自分のために生きてほしいし、後悔したり、無駄だなって思う出来事があったとしても、そんなことないよって寄り添いたい。浅はかかもしれないけど、本当に今はそういう気持ちなんです」


■続く「月影」は温かくて至極優しい曲。

「普遍的な曲ですよね。メロディやアレンジに引っ張られてじゃないですけど、歌詞も素直になっちゃったというか。新しいと思います。アプローチがこんなにひねくれていない曲はない(笑)」


■ククク。海外を巡ったツアーなど、世界中の人と繋がる機会が増えている今、3曲すべてがほぼ日本語で、なおかつ、日常使いの言葉で綴る歌詞になったのも興味深いです。


「海外ツアーで強く感じたのは、言語は違っても、みんな一生懸命一緒に歌ってくれるんですね。だとしたら、出掛けた先の国の言葉で音楽をやらなきゃいけないってことは全然ないというか。日本に生まれた私が日本語を使うのはあたり前だし、日本語の響きがとても好きだし、日本語話者の自分だからできる音楽があるなって再確認したので。それが今のモードかもしれないです」



▷ 9月27日発売のB-PASS 11月号にも、シングル「Sign」についてより掘り下げたロングインタビューを掲載します。お楽しみに!
24th Single 「Sign」

24th Single 「Sign」

2024.08.28 Release
■初回生産限定盤(CD+BD)¥1,760
「Sign」Music VideoBlu-ray同梱

■収録曲
M1.Sign
(TVアニメ『狼と香辛料MERCHANT MEETS THE WISE WOLF』第2クールオープニングテーマ)
M2.Wren
M3.月影
M4.Sign –Instrumental-
M5.Sign–TV ver.-

■期間生産限定盤(CD+BD)¥1,760
TVアニメ
『狼と香辛料MERCHANT MEETS THE WISE WOLF』
描きおろしイラスト使用ミニポスター&三方背ケース仕様
TVアニメ
『狼と香辛料MERCHANT MEETS THE WISE WOLF』
ノンクレジットオープニング映像収録BD同梱

■通常盤(CD)¥1,320
2024年秋より、全国10都市19公演を回る全国ホールツアーを開催!
▼2024年
10月25日(金)千葉・市川市文化会館大ホール
10月26日(土)千葉・市川市文化会館大ホール
11月2日(土)兵庫・神戸国際会館こくさいホール
11月3日(日)兵庫・神戸国際会館こくさいホール
11月30日(土)宮城・仙台サンプラザホール
12月1日(日)宮城・仙台サンプラザホール
12月6日(金)愛知・愛知県芸術劇場大ホール
12月7日(土)愛知・愛知県芸術劇場大ホール
12月14日(土)神奈川・パシフィコ横浜国立大ホール
12月15日(日)神奈川・パシフィコ横浜国立大ホール

▼2025年
1月12日(日)福岡・福岡サンパレスホテル&ホール
1月13日(月・祝)福岡・福岡サンパレスホテル&ホール
1月25日(土)京都・ロームシアター京都メインホール
1月26日(日)京都・ロームシアター京都メインホール
2月1日(土)群馬・高崎芸術劇場大劇場
2月21日(金)大阪・フェスティバルホール
2月22日(土)大阪・フェスティバルホール
3月8日(土)東京・ガーデンシアター(有明)
3月9日(日)東京・ガーデンシアター(有明)

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