5月29日に届けられたEP『ぼくらの涙なら空に埋めよう』。ここに収録の「忘レナ唄」は、高校の野球部をテーマにしたTVアニメ『忘却バッテリー』のエンディングで流れているナンバーで、バンドだからこそ表現できた熱が込められている。この楽曲をはじめ話題性と内容に富んだトータル4曲をメンバーが語り尽くす。
Text 山口哲生 Photo 木村心保
Hair&Make-up 飯束ゆうこ Styling 髙田勇人
■EP『ぼくらの涙なら空に埋めよう』に収録の「忘レナ唄」は、TVアニメ『忘却バッテリー』のエンディング曲ですね。
はっとり「ここ2人(はっとり、田辺)は野球好きで、経験者として、野球関連のお話はなんであれ嬉しいし。実際に原作も読んだうえで、いい作品に携われるんだなということで、回を追うごとに作品と一緒に成長していけるような曲を託したいと思ってましたね」
■回を追うごとに成長というのは?
はっとり「具体的な言葉を極端に入れたりはせず、聴いた人がキャラクターを投影したりして、回を追うごとに曲の表情や懐の深さが変わっていったりするのが理想だなって。あとは、聴いた人が自分を投影できるような余白も作ろうっていうイメージはしてました」
■余白は設けつつも、登場人物の名前を入れた〈遥かな距離より、かなめは行き方〉という歌詞もあって。遊び心もあり、この曲を端的に言い表わしている一節な気もしました。
はっとり「確かにそういう感じはしますね。終わりって唐突に訪れたり、そこに向かって急いでいるようなところもあると思うけど、結局どうあれすべて終わってしまうのであれば、その過程が大事なような気がするし。どれだけ華やかな終わりをみんなで迎えられるか、もしくは自分が納得のいく終わりを感じられるのかというのは、その過程でどれだけ一生懸命に今を追いかけたかだと思うので」
[L→R]高野賢也(B.)、長谷川大喜(Key.)、はっとり(Vo.&G.)、田辺由明(G.)
■歌詞自体はスムーズに出てきましたか?
はっとり「わりとこねくり回さず、素直に浮かんできた言葉を重視しました。今回の収録曲は“月へ行こう”は2~3ヵ月ぐらいにわたって完成させましたけど、他の曲はインスピレーションでいけた感じはします」
■サウンドに関しては、青春らしい爽快感や、それこそいずれ終わりがくる儚さもありつつ、音はかなり骨太で。そういったサウンド像も最初からイメージしていたんですか?
はっとり「そうですね。パワーポップ然としたものというか、骨太なもののほうが野球との相性がいい気がして。“PRAY.”(第95回センバツMBS公式テーマソング)もわりとパワーポップだったんですけど、そっちに自然とイメージが向いていくというか」
■ギターソロの後にはザ・パワーポップ!なフレーズも出てきますね。
はっとり「あの手のリズムでギターもベースもユニゾンしていくのって、実は意外とやってこなかったから、やってみたらすごく気持ち良くて。これはみんなやるわけだ!って」
一同「ははははは(笑)」
はっとり「ライヴでやるとすごい気持ちいいんですよ。だからまぁ、デモ段階からイメージはハッキリありましたね。鍵盤メインというよりもギターが目立つ曲で、分かりやすいことをして終わろうかなという」
田辺由明「“高校野球=熱量があるもの”というイメージがある人も多いと思うので、その部分をサウンドで出せたらいいなと思ってました。ギターのアレンジはシンプルではあるんですけど、サウンドでよりエモーショナルさとか、熱量を伝えられたらいいなって」
はっとり「一発録りしたしね。その時の感情が乗ったものを優先しようっていうことで、いつもはアレンジを固めた後、慣れるまで練習するんだけど、それも敢えてせず。結果ヒリヒリして、いいテイクになりましたね」
高野賢也「作品としては、高校生活という限られた時間の中で、過去は対立していたけど今は一緒に戦うとか、熱いところもあって。全員の気持ちが同じ温度で話が進んでいくので、レコーディングもみんなで同時に録るっていうのは、アニメにも合っているし、曲の雰囲気としてもよかったと思います」
長谷川大喜「僕、一発録りが初めてだったんですよ。今までは僕以外のメンバーが一発録りしたものの上に、僕が鍵盤でいろんな音色を重ねていたので。なので、ちょっと緊張していたんですけど、でも高校生の青春って、突き進んでいくイメージがあって。大人になると突き進むことに躊躇したりするけど、これまで逃げていた一発録りも…… 」
はっとり「逃げてたの?」
長谷川「いや(笑)、やっぱり練っていいものを作りたいから。でも、守るだけじゃなくて攻めてみようとか、自分の可能性を試してみたいなと思って。音に気持ちを乗せたら、熱量のあるもの、勢いのあるものを録れたので、いい経験になりました」
■2曲目の「月へ行こう」は、映画『FLY!/フライ!』の日本版主題歌。この曲は時間がかかったとのことでしたね。
はっとり「海外アニメの曲をやるのが初めてだったので、自分的に相当気合が入っていて。特にサビのメロディはもう本当に何回も書き直しましたね。広がり方に段階をつけたかったので、前半と後半で2段構成にしようと思っていたんですけど、前半で期待させたわりには、後半が自分の中で全然超えてこないなと思って。かなり苦戦しました」
■サウンド的にはめちゃくちゃ音が分厚いところもあれば、ものすごく絞っているところもあって。かなりダイナミックですね。
はっとり「差し引きはすごく考えました。間奏のところはみんなでセッションしたんですけど、ギターソロの後に鍵盤を入れて、最後ちょっと余ったから、”よっちゃん、もう1回ギターソロいこう”って。でも、同じようなことをしてもくどいから、入口はウーマントーンっていう優しい感じでね?」
田辺「うん。僕はハードロック好きなんですけど、前半のギターソロに関しては歪みと速弾きを封印して、ちょっとブルージーな感じで弾いてみようって。それで間奏にもグラデーションが生まれてよかったです」
はっとり「そこに成長を感じましたね。よっちゃんもそうだし、ベースも間奏の中で弾き方を変えて工夫してるし、なによりも大ちゃんがよかった。エレピって音を歪ませると強弱がある程度一定になっちゃうけど、弱い/強いの2パターンじゃなくて、その中間もあったりとか。そういった強弱も俺がしつこく要望したわけじゃなくて、みんながそうしてくれたし、楽器のプレイでダイナミクスを表現できたのはかなりの収穫でしたね。この曲の聴きどころでもあると思います」
長谷川「“なんでもないよ、”の時にヴォーカルと鍵盤で2人一緒に歌うというのをテーマにして弾いていたんですけど、それをより突き詰めたくて。もっと心の芯に訴えかける弾き方ができるんじゃないかなっていうのは考えていたし、意識してたんですよ」
はっとり「“なんでもないよ、”をライヴでかなりやってきたおかげで、歌とのシンクロ性が高まったとこってない?」
長谷川「それはあるね」
はっとり「大ちゃん、いつも俺の顔をめちゃくちゃ見ながら弾いてるけど」
長谷川「見ないと弾けないよ(笑)。はっとりくんの息の飲み方で声のダイナミクスも変わってくるし、優しく入る時もあればちょっと強めに入る時もあるから、そこに準じたものが弾ければと思って」
はっとり「うん。職人の感じがすごくある」
続きはBACKSTAGE PASS 2024年7月号でお楽しみください!!
『TRIP INSIDE 〜Osaka-Jo Hall & Nippon Budokan〜』
10月5日(土)大阪・大阪城ホール
10月6日(日)大阪・大阪城ホール
10月11日(金)東京・日本武道館
10月12日(土)東京・日本武道館
マカロニえんぴつ
神奈川県発4人組ロックバンド。’12年結成。’17年9月より現体制での活動をスタート。’20年11月、メジャー1st EP『愛を知らずに魔法は使えない』を発表。’23年8月、メジャー2ndフルアルバム『大人の涙』をリリースした。10月に『TRIP INSIDE 〜Osaka-Jo Hall & Nippon Budokan〜』を開催予定。
公式サイト
https://macaroniempitsu.com/
発売日:2024年5月27日
判型:A4判
頁数:128ページ
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