現在、ホールツアー『imase Hall Tour 2025 “Remake”』を開催中のimaseから、2つの新曲が届いた。現在放送中のフジテレビ水10ドラマ『Dr.アシュラ』の主題歌として書き下ろされた「名前のない日々」と、『ジャックス』CMソングである「惑星ロマンス」の制作についてインタビュー! 7月に控える初の日本武道館公演『imase LIVE “Have a nice day” in NIPPON BUDOKAN』への意気込みも。
■フジテレビ⽔10ドラマ『Dr .アシュラ』の主題歌「名前のない⽇々」は、脚本をお読みになってから書かれたそうですね。
「そうです。医療系のドラマというのもあり、曲調はバラードで、歌詞は命を題材に書きました。ドラマの主人公・杏野朱羅先生(演:松本若菜)は、患者の命を救うことを一番大事にしていて、それ以外のことには無頓着。そんな主人公を見て、人生の中で迷いが生じた時に、やっぱり自分の中に芯を持っていることが一番道を示してくれるなと感じまして。そういったことを歌にしようと思い、この曲を作りました」
■どこから書き始めたんですか?
「優しい歌とピアノだけで始まるのがいいなと思ったので、冒頭のメロディを最初に作ってからサビのメロディを考えました。歌詞で言うと2サビから書き始めたと思います」
■〈私を探していた 旅路で迷っていた 今更ここまでの 根拠に縋っていた 美しいものにばかり⽬が眩む ⼦供のように 嘘をつけない そんな⾃分を愛している〉の箇所ですね。
「最初は、自分が追い求めるゴールや、人生の目標を探しているような描写から始まります。自分としても“これまでやってきたことが正しかったのかな?”や“この先もこれを信じ続けていいのだろうか?”など。僕自身が優柔不断なところもあれば、困惑しちゃうこともあって。最後の“ここぞ”という場面で、いつも迷ってしまうタイプなんです。そんな時、ここまで生きてきた経験や結果でしか、自分を信じられるものってないですし、そういった根拠にしか縋りようがないんですよね。そういう意味で、この曲は自分にも訴えかけるように作っていた気がします。旅路に迷った時に迷い続けちゃう自分も認めてあげよう、というか、それはそれで良さがあるなって」
■imaseさんが抱く迷いや悩みというのは?
「“このまま活動していくのがいいのかな?”とか、目の前の目標もそうですし、“数年後にどうなっていたいのか?”や“どういうアーティストでいたいのか?”もそう。常に迷い続けていますし、自分はよくも悪くも“こうなっていたい”という芯がないタイプなんです。そういうのも含めて要所要所で迷ってしまうんですが、そんな自分もいいよねって。きっと同じような人達もたくさんいると思うんです。逆に、朱羅先生は常に己の決めたことだけに向き合って、しっかりその信念を貫き通すために他のことは捨てる。嫌われても叩かれても、自分の芯を突き通すために行動していく様が、すごくカッコ良くて。そんな人のことも歌いつつ、逆にそうじゃない人の気持ちも代弁している歌詞になっていると思います」
■ちなみに、冒頭は〈理由のないこの⽇に 名前を付けたくないわ〉だったのが、ラストでは〈理由のないこの⽇に 名前を付けてしまった〉に着地します。〈付けてしまった〉という、どこか後ろめたい言い回しにしたのはどうして?
「そこには2つの意味を込めていて、1つはこれまでの日を終わらせてしまった意味での〈付けてしまった〉。もう1つは覚悟ですね。これまでの日々に名前を付けないように過ごしてきて、旅路に迷った時にも目をそらし続けてきたけど、“ここからは芯を持って新しい自分になるんだ”と覚悟を決めた意味もあります。ちゃんと意思を固めて、信念を決める場面を表わしています」
■自分に対しての戒めじゃないですけど、もう後戻りはできないという意思表示でもある。
「そうです。そういった場面に自分も直面することがあるだろうし、人生において“こっちを選んだらもう後戻りできない”というか、そっちにしか進めなかったり、そういう選択が年を重ねるごとに増えるのを感じているので、まさに自分への戒めでもあるかもしれないです。そういった日々から目をそらさずに、ちゃんと名前を付けなくちゃいけない、と」
■〈今⽇は昨⽇を 薄めてるみたい 年⽼いた⼈が 薄味を好む 理由がわかるよ〉は哀愁があっていいですよね。
「まだ24歳ではありますが、昔は初めての経験をすることが多くて、新しいことだらけだったんです。でも今はその時と比べたら、どんどん薄まっていっているような日々にも感じていますし、逆に薄まってきている日々に慣れている自分は、自然と薄味を好むようになってきているなって。新たな選択を取るようなリスクは負いたくないし、大きな決断を避けたいと思ってしまうこともあって。その分責任が生まれているのもありますが、どんどん薄味を好むようになっていると感じますね」
■薄味の日々になっていると感じた時、imaseさんはどうします?
「いやぁ……ずっとネガティブですね(笑)」
■はははは。
「サビでも歌っているように、僕は迷い続けていますし、これまでの自分の根拠に縋り続けている。そういった意味で憧れはありますね。“これをするんだ!”ってパツンと決めて、それを遂行するために“後はどうなろうが、他の人からどう思われようがいい”という決断を取れる人はすごいなと思いますし、そのメンタリティは素晴らしいよなって。僕がそうなった時は“はぁ、どうしよう”となりますね(笑)」
■ちなみに、この楽曲をお聴きした時に、僕の中では「Have a nice day」が浮かんだんです。あれはコロナ禍に書かれた曲で、自宅待機中は家から出られず仕事もできず、なんなら人と会うこともできない。状況的に言えば、名前のなくなった日々のことを歌っていますよね?
「まさにそうですね」
■ただ、「Have a nice day」は「名前のない日々」のように答えを出さないまま曲が終わる。
「そうですね。もっと抽象的というか」
■そういう意味では「Have a nice day」の先を歌ったのが「名前のない日々」に思いました。
「確かに! “名前のない日々”は“Have a nice day”よりも直接的なワードを使っているし、その時の空気感をより鮮明にした感じがありますね」
■「Have a nice day」では、あえて答えを出さないようにしていたんですか?
「あの時はどういう気持ちだったんだろう……。曲には関係ないですが、時期で言うと、がむしゃらに“新しいことをいっぱいやるぞ!”みたいな心境で。歌詞自体は暗くて救われないような内容ですが、自分の目線としては、世間を俯瞰で見ていたと思うんです。つまり状況説明の歌だったんですね。当時の状況や空気感を淡々と説明しているのに対して、今回の曲はより自分を投影していると思います。自分がネガティブや迷いの中にいる当事者になっている。だから“Have a nice day”の先に“名前のない日々”がある、というのは確かにそうだなと思いました」
■あと「逃避行」もそうですけど、こういうimaseさんの死生観が表われている曲が好きで。
「本当ですか、ありがとうございます! 死生観が出ているのは“逃避行”と“名前のない日々”くらいな気がしますね。他の曲はマクドナルドのことを歌った“Happy Order?”とか、タイアップにがっつり寄せていて。生活がちゃんと描かれている曲って意外と書いていなかったので、今回は死生観も含めて、ちゃんと人間を描けている曲になったと思います」
■1番のAメロが1回しか登場しないのも含め、珍しい構成やピアノのサウンド感も魅力的でした。
「アレンジを考える上で、普通のJ-POPになりすぎないようにしたいと思ったんです。そしたら、編曲の久保⽥真悟さんがシンセとピアノを合わせてくださったおかげで、J-POPと洋楽の好いとこ取りになったなと思いました」
■ピアノやシンセ主体でありながら、ギターもいい味を出していますよね。
「久保田さんはサウンド感に関して、チャーリー・プースをリファレンスにしていて。音だけ聴くと海外バラード感がありますが、メロも含めてしっかり日本のバラードにもなっている。非常にいい塩梅のアレンジになったなと思います」
■特にこだわったのはどこでしょう?
「まず、ヴォーカルのレコーディングにすごくこだわって。普段だと、サビで声を重ねてダブルにすることが多いのですが、RECする少し前に小西遼さんと大阪万博の曲「Physical Twin Symphony」でご一緒しまして。その時に小西さんが“チャーリー・プースのレコーディングの仕方がすごくいいよ”と教えてくださったんです。(チャーリー・プースは)1曲に対して10本以上の歌を重ねているんですが、ちょうど今作っている曲のサウンド感もチャーリー・プースっぽいので、“それちょっと真似します!”と言って(笑)。レコーディングの時もサビでいろんな音質の声を6本ぐらい重ねて、自分の声の美味しい成分だけをうまく抽出しました。今までの楽曲の中では、一番チャレンジングな録り方をしましたね」
■4月25日には「ジャックス」の新CMソング「惑星ロマンス」が配信リリースされました。曲調や歌詞の世界観など「名前のない日々」とは対照的ですね。
「こちらは“夜っぽい雰囲気もありつつ、ダンサブル曲調にしたい”というオーダーを受けて作りました。CMのテーマ自体が、新しい自分に出会うために買いものをして、自信や勇気を手に入れよう、みたいな。それを買うことは未来を決めることだ、という内容だったので、歌詞も“新しい自分を手に入れるためには、今まで手にしていたものを手放さなくちゃいけない”ということをポップかつキュートに歌っています」
■可愛さを出すために、どんなことを意識されましたか?
「〈愛がなくっちゃ ダメなのさ〉の“〜っちゃ”という部分が個人的にはポイントになっていて。地元・岐阜県など東海圏で流れている『かつめい茶』というお茶のCMがあるんですが、“これがなくっ茶”と歌っていて、“ちゃ”の使い方がすごくキャッチーだなと思っていたんですよ。自分も聞き馴染みがあったので、同じように“ちゃ”で終わるような置き方をしたいなって。……ご出身はどちらですか?」
■僕は神奈川県です。
「あぁ〜、神奈川県だと流れていないと思うんですけど……(自身のスマホを取り出して)ちょっと待ってくださいね」
■imaseさんの地元の方はみんな知っているんですか?
「東海に住んでいる人なら知っていますね。お待たせしました、流しますね」
■おお! 確かに“ちゃ”を連発していますね。
「最初にその“ちゃ”が思いついていて、そういえば『かつめい茶』のCMもキャッチーだったなっていう、後付けではあるんですけど。CMソングとしても耳に残るし、“曲の題材や歌詞も自由に書いてください”と言われていたので、一聴して引きつける感じを意識して書きました」
■「夜を感じるダンサブルな曲調」というオーダーされたと言われましたけど、スペイシーさもありますよね。
「これまで宇宙を題材にした曲を書いていなかったなと思ったので、安直ですが“宇宙だったら夜っぽいよな”って(笑)。雰囲気的にもボケてもいいかなと思ったので、2Aの〈宇宙まで運転のバイト募集 けれど最低賃⾦払えないから 辞めたよ〉と小ボケを入れたりしながら、楽しく作りました」
■「惑星ロマンス」は随所に遊び心を感じましたが、imaseさんの中で一番こだわったのはどこでしょう?
「自分がリファレンスにしていたのが、Klang Rulerさんがカバーした“Timing ~タイミング~”なんです。ストリングスのスターカットを参考にしていたのですが、それだと明るすぎるなと感じて。編曲のESME MORIさんと、明るく響きすぎてしまう要素を減らしつつ、歌詞が宇宙を舞台にしているから、アレンジも宇宙っぽいスペイシーな感じになるようにシンセの音などを作っていただきました」
■そういえば、サウンドプロデュースを担当されている廣澤優也さんの過去のインタビューで、imaseさんのことを“水みたいな存在”と言っていたんですね。自分のやりたいことを曲に反映するけど、タイアップなどで相手の方から求められたことも臨機応変に取り入れる。そのバランス感がすごいし、水みたいな人だと仰っていて。今回の2曲をお聴きして、改めてその言葉に頷きました。
「同年代のアーティストと話していても、自分はかなり器用なタイプなのかなとは思います。それと同時に、もっと自分の中に芯を持ったほうがいいのかなとも思ったりして。そこの迷いは常にありますね。アーティストによっては、“これ以外は作らない”というタイプの方もいるので、そういうアーティスティックな良さもあるよなと。ないものねだりかもしれないですが、そこへの憧れはありますね。タイアップではなく、完全に自分主導で曲を作る場合、果たして今の自分は何を作るんだろう?って。imase感が全開の曲って何だろう?とは思いますね」
■いい意味でimaseさんはアーティストでありながら「自分はこうだ」と我を押し通すタイプではない気がしていて。それこそインタビューで「曲を聴いて、僕はこう思ったんですけど」と言っても、否定することがない。真摯にこちらの言っていることを受け入れてお話してくださる印象があるので、この柔らかい感じはすごく魅力的だなと思っています。
「逆に、僕は気づかせてもらうことが多くて。例えばファンの方の考察とか、いろんな方が考察してくださった時に“あ、そういう視点もあるんだ”とか“確かにそういう要素もあるかも”みたいな。さっきの“Have a nice day”の話も、確かに今のほうが自分が当事者に立って歌っているなと知ることができて面白かったです。曲を作っている時は淡々と進めることが多いので、後から、そうだったのかもと気づかせてもらえるんですよね」
■その柔軟性はどこから生まれているんですか?
「昔から優柔不断なので、そこが大きいんじゃないですかね(笑)。バシッと決められないところが要因かもしれないです」
■ESMIさんの過去のインタビューでは、「NIGHT DANCER」のサビ始まりについて「普通は地声で張り上げるけど、ファルセットを使うのが新しい」と言っていて。自分の歌唱力を押し出したいと思うなら、やっぱり地声でいくと思うんですけど、imaseさんはそこをあえてファルセットにした。自我を強調しないところも魅力的だし、聴いていて、そういうアプローチがあるんだ!と驚かされる。優柔不断というよりも、自我と他我のバランス感が本当に絶妙であり、そこに人間性も表われている気がしました。
「当時は今より何もできなかったですし、アイデアもなかったですし、いい意味で正解が分からなかったんですよね。そのおかげで、ファルセットで始まる“NIGHT DANCER”や、ファルセットで歌った“Have a nice day”が生まれたんだと思います。逆に、もっと音楽の経験があったらああいう歌唱はやらなかったのかなとも思います。あの時の感性はすごく大事だなと改めて思います。当時の僕は、地声でめちゃくちゃ張った歌唱はできなかったと思っていて。逆に、今の自分なら歌えるから、あのアプローチはやっていないのかなって」
■面白いですね。
「当時のほうができないことが多かったぶん、逆によかった部分もあるのかなと。あと、その頃のほうが“面白いからこうしよう”が強かったと思います」
■現在のimaseさんは?
「今のほうが作為的というか、タイアップありきで曲を作ることが多いので、“ここはこうしよう”と考えますし、サビはこうしたほうがキャッチーだよね、とか。それこそ“惑星ロマンス”の〈〜なくっちゃ〉も作為的じゃないですか。そこが当時は見えていなかったのかなと思いますし、見えなかった中で生まれる感性も大事だな、と最近になって感じますね」
■ロジカルな曲作りができるようになったからこそ、それを度外視した曲を作っても面白そうですね。
「はい。世間がそういう曲を求めている気がすごくします。歌詞を試行錯誤して練るとか、こういうウケ方をしてほしい、みたいな曲は、やっぱりバレてしまう気がして。TikTokをはじめ、SNSでもDIYな曲がバズったり、そういう曲が求められたりするのって、狙い過ぎていないかどうかが大きいのかなと。最近Aメロがバズっているのも、そういうことだと思うんですね。いかにも“サビです”みたいな感じではなく、自然なメロのほうがスッと耳に入ってくるし、何度でも聴きたくなる。今はそういう曲をみんなが求めているんじゃないかなと感じていますね」
■それを逆張り的に狙うってことなんですかね? もしくは何も考えずに作曲していくべきなのか……。
「狙うとちょっと難しいですよね。だからこそ、その頃にしかできない何かがあったのかなと思いつつ。でも今は今の戦い方があると思うので、そこは追及しなくちゃいけない。良い塩梅でやっていきたいです」
■リリース以外のこともお聞きすると、現在は初の全国ホールツアー『imase Hall Tour 2025 “Remake”』を開催中。一発目となる千葉・市川市文化会館公演を終えられましたが、手応えはいかがですか?
「パフォーマンスや演出、自分のヴォーカルなど、前回のツアーよりも格段にレベルアップしている感じがしていて。お客さんとの関係値も以前よりだいぶ出来上がっているように感じています。曲中で自分が分かりやすく煽らなくても、ファンのみ皆さんがリアクションしてくれて、そういうプラスの手応えを感じています。過去を振り返っても、今までで一番いい初日だったなと思いますね」
■タイトルの通り、過去の曲をリメイクするのが大きなポイントですよね。
「具体的な曲名は挙げられないですが、音楽好きな方がアガるポイントがたくさんあります。音源と全然違った曲調に聴こえたり、自分の歌い方もガッツリ変えたりしている曲もあるので、面白いライヴになっていると思います」
■そんなツアーを完走すると、7月25日には初の日本武道館公演『imase LIVE “Have a nice day” in NIPPON BUDOKAN』が控えています。
「テーマとしては、初期から現在までのimaseを振り返るようなライヴにしたいと考えています。セトリやセットに関しても、まだ完全に固まっているわけではないのですが、昔から知ってくださっている方は感動するライヴになると思います。初めて来られる方もちゃんと楽しめるような、どんな方が観ても楽しめるはず。自分としてはメモリアルな日になると思うので、特別な1日にしたいです」
imase
イマセ。岐阜県出身、シンガーソングライター。’20年より音楽活動を開始。TikTokに投稿した歌唱動画で大きな注目を集め、’21年12月に配信シングル「Have a nice day」でメジャーデビュー。’24年5月に1stアルバム『凡才』を発表。現在『imase Hall Tour 2025 “Remake”』を開催中。7月25日に初の日本武道館公演『imase LIVE “Have a nice day” in NIPPON BUDOKAN』を開催予定。
公式サイト
https://www.imase-official.com/
imaseのサイン入りチェキを2名様にプレゼント!
【応募方法】
(1)B-PASSのX公式アカウント(
@BP_35th)をフォロー
(2)ハッシュタグ「#BPASS」をつけて対象ポストを引用ポスト
【応募締切】
2025年5月30日(金)23:59まで
※発送先は日本国内に限ります。
※当選者の発表は、発送をもって代えさせていただきます。当落に関するお問い合わせはお受けできません。
※当選者の方にはダイレクトメッセージでご連絡をさせていただきます。